工房からほど近い湾へと続く川辺で
うなぎ漁をする漁夫は、
川筋約1.5kmに仕掛けた竹製のビク(うなぎの寝床)に
うなぎが入っているかどうか確かめながら、
小舟を漕いでいく。
うなぎが入っていない仕掛けはチャプンと川に戻し、
うなぎがかかっている時は
すばやく左手に網を持ち、
さかさにした仕掛けからうなぎを取り出すと、
トンと舟底に網を返し、
トロ箱の中にうなぎを入れていく。
チャプン、チャプン、トン、チャプン・・・
静かな早朝の光景に響くうなぎ漁の音。
この川筋でくりひろげられる光景は、
ひとりぼっちの
小さな漁にすぎないけれど、
毎朝繰り返されても
そのリズムが乱獲を防ぎ、
この川からうなぎが姿を消してしまうこともない。
一方で、
魚群探知機を搭載した船で、
海の魚をねこそぎ取ってしまう漁がはびこっているのも現実だ。
一攫千金をねらう漁師は高級車に乗り
あたかも成功者のようにふるまうかもしれないけれど、
気がつけば、
乱獲され続けた魚が海から姿を消し、
漁そのものができなくなってしまう。
それはなにも漁に限った話ではなく、
我が身に照らせば、
木工とて同じような有様ではないのだろうか。
はたして僕は
この川辺の漁夫のリズムのような木工に
取り組めているのだろうか?
今朝もまた、
漁夫は、お手製の櫓をこぎ、
時折トンという音色を川面に響かせながら
もくもくと
仕事を続けている。
山本 美文