ヒエラルキーのないクラフトフェアが失われていく

コロナ禍でクラフトフェアの自粛が相次いでいます。
これまで、クラフトフェアについて振り返ってみたこともなかったけれど、
こんな時期だからこそ、僕はなぜクラフトフェアに応募しなくなったのか?
その理由を考え直してみました。


従来型の公募展と異なるアンデパンダン(無審査)で始まったクラフトフェアも、
時代の波に押され(応募者が増え)、出展作家の人数制限を行うための「選考」が取り入れられるようになります。今では、クラフトフェアに選ばれたことを自らのプロフィールに載せる作家までいるというのですから、入選することが作家の勲章のように扱われていた かつての公募展の有様に逆戻りしているようにも見えます。クラフトフェアに受かりたいがために、選考の傾向を探る作家まで出現しているなんて噂を耳にすれば、自分らしさを表現できる自由な風潮の場が失われつつあるとしか思えません。

確かに、公募展の入選歴や賞歴をプロフィールに書き込むことが作家の証と言われていた時代もありました。自分にもそういった時があったので否定できる立場にありませんが、入選歴や賞歴を並べたてるなんて、昭和生まれの僕から見ても「昭和」っぽ過ぎる(笑)
自らの眼を信じて、「好きなものを好きと公言しよう」と唱えていたクラフトフェアの精神は、一体どこに向っていくのだろう? 選考は、厳密になればなるほど審査員の好みのものが増えていくだけですから・・・

課題を受け、新たな創造へと挑む公募展の意義はいつの時代も変わりません。只、作家が入選歴や賞歴を胸にかざしてしまうと、プロフィール自体が作家の威厳へとつながりかねません。外に向けられたベクトルは、受賞を勲章にすり替え、知らぬ間に作家が「先生」扱いされたり、「大御所」という仮面を被らされたりするのが落ちです。公募展に向けて努力した結果(賞歴)は、自らへのご褒美くらいにとどめておく方が、等身大の姿を見失わずにいられるのではないでしょうか?


クラフトフェアの大きな目的は、作り手と使い手の柵を取り払い、
共に生きる豊かな生活を望めるところにあります。
権威のない場所にしか生まれない「真の自由」、柵のない世界。
クラフトフェアに自由な風を取り戻すには、
「どんな場所どんな人たちと並んでも、必ず見てくれている人はいる」と、
使い手の眼を信じている作り手を探す手立てを考えだすしかありません。
ヒエラルキーを生まないクラフトフェア本来の姿を求めて。

(つづく)









2021・年間スケジュール

【  2021年  】
 年間スケジュール 


【6月10日(木)~15日(火)】 IN MY BASKET(東京・世田谷区)

※陶芸の大村剛さん、ガラスの橋村大作 / 野美知さんをゲストに迎えて








【 8月1日(日)~10日(火)】
手児奈(40+2)周年展・その1「器」
                            ↓
【 8月20日(金)~29日(日)
手児奈(40+2)周年展・その2「道具&オブジェ」
                                                                                           
   工芸ギャラリー手児奈(愛知県・名古屋市)


先に岡山市での二人展が決まっておりましたので、
数点でのグループ展への参加を予定しております。






【 8月7日(土)~15日(日  )】アンクル岩根ギャラリー(岡山・岡山市)

※木工造形作家・榎本勝彦さんとの二人展












【9月7日(火)~21日(火】 朔(岡山・倉敷市)
                          ↓
【10月6日(水)~20日(水】朔(岡山・津山市)
 
倉敷会場から津山会場へ巡回する展示会を運営される【朔(ついたち)】
がオープンされます(初のグループ展)。

貸しスペースを利用されての巡回展ゆえ、
場所及び内容等につきましては、あらためてご案内致します。

※津山会場展期間中のみ、オンライン展も併設されます。





〈出展作家〉
(陶芸)棚橋祐介
               林拓児
               吉田次朗
               渡辺隆之
               井山三希子《10月の津山会場のみ出品 》
(木工)芦田貞晴
               山本美文
(金属) 三輪周太郎










【 11月20日(土)~28日(日)】ギャラリーqibao(中国・北京)
                               ↓
【11月29日(月)~12月14日(火)オンライン展】

中国(北京)での初個展。
個展に併せて、
僕の綴った本(エッセイ~中国料理レシピ~パンセ~山本千夏さんとの対話~アーカイブ写真集)を販売します。(中国語と日本語を併記)
※日本でも限定数販売予定

水辺の心象風景

アーツアンドサイエンス(HIN)での取扱いを担当してくれている女性は、
幼い頃から絵を描くことが好きだったけれど、
学生時代に才能がないと思い詰め、
その世界から離れたという・・・

絵の世界に生きていない僕からできるアドバイスなんてなかったけれど、
「木工の才能がないから、僕は作り続けているのです」と応え、
「自らの美意識を変えていきたいだけなんです」と続けた。

何でも評価したがる日本の美術教育の下では、
彼女のように、好きでも諦めてしまう学生が増える一方に違いない。
画家になることだけが選択肢じゃないはずなのに・・・
帰り際に、
「いつかまた、絵筆を握る日を待ち望んでいます。」とだけ付け加えて
僕は京都を後にした。





昨年、アーツアンドサイエンス用に試作した
白漆の珈琲缶(豆200グラム用)。
アーツアンドサイエンスのカタログに載せるために送ったもの。

ちょうどその頃訪れた福山市の神勝禅寺。
目的は、ここのうどんだったけれど(笑)、
寺に続く路沿いの池に射し込む光が、
モネの池の心象風景のように見え、僕は息を飲んだ。

工芸の世界では使いたくないと思っていた「表現」という言葉を受けとめてでも、
その水辺に射す透き通った光の光景を
自分の作品に写し込んでみたいと思い、
立ち止まっていた。

その日以来、
「光のもつ色彩を白漆で表現してみたい」
と願いながら続けてきたテストピース。

ようやく、
思い描いていた色彩に近づいてきたので、

普段使っている漆刷毛でなく、
絵筆を握り、
あの光を求めてみた。








大きな桜の木の下で


満開の桜が散る様に、「生」と「死」の無常を重ね合わせてみたいと願う。

来週納品することになっている
山桜の仏壇は、

4点の仏具の納まる引き出し内のサイズから
全体の寸法を割り出したオーダーメイド
(巾390×奥行330×高さ500㍉)


両手を合わせながら扉を開けると、
引き出しに使っている木曽ひのきの香りが漂ってきます。
(引き出し上部に香りを通す引手口を設けています)

位牌を包み込むように曲面で仕上げた前扉。
裏板は、お掃除のおり外せるよう、
「いってこい」という工法ではめ込みます。



50代の頃、もしものために自分用の仏壇を作りました。

木工を職にしながらも、
他人の作った仏壇に入ると思うと
居心地や装飾の仕立てまで気にかかりそうなので(笑)、
ミニマムな仏壇に(巾315×奥行190×高さ450㍉)

無宗教ゆえ中に入れるものも思いつかない僕は、
木彫家の知人に依頼し、
仏具の代りに、
かつて暮した木曾山中の深い森で、
顔を合わせる度にジロリと僕を見る
(住人を認識してくれていた)

森の守り神を彫ってもらうことに。
                                         (木彫)クロヌマタカシ・作

6月と8月の二人展のご案内

4月に予定していた「牛窓クラフト散歩」の開催を断念したので、
次の作品を出展するのは、
6月の東京と8月の岡山になります。



6月10~15日の東京(玉川田園調布 / IN MY BASKET)では、
陶芸家・大村剛さんと
ガラス作家の・橋村大作さん、野美知さんをゲストに迎えます。







8月7~15日の地元岡山(岡山市 /アンクル岩根ギャラリー)での二人展は、
岡山の彫刻家・榎本勝彦さんとの木工・二人展




共に、真っ直ぐな姿勢のお二人なので、
勉強させてもらうつもりで、
自分らしく肩を並べさせてもらおうと思っています。

プロフィール

HN:
山本美文アトリエ
性別:
非公開

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