テント下のベイビーボウルセットの前で
立ち止まった一人の女性。
5月のクラフトフェアまつもとでのこと。
一度は立ち去ったものの、同じ場所で再び
ベイビーボウルセットを手にしている。
「南青山の洋服屋ですが、作品を取り扱わせてもらえませんか」
と名刺を差し出される。
「工房の仕事は手いっぱいの状態です」
と現状をお伝えしたものの、
「どうしてもお客様に届けたいんです」
と詰め寄られた。
「10セットだけでもオーダーさせてください」
「納期も急ぎません」
引き下がらず、真っすぐこちらを見て話しかける瞳からは
彼女の熱意がひしひしと伝わってくる。
若い女性に詰め寄られると弱いことを知っている妻は
うしろでニコニコ見ていたようだけど、
弱いのは女性だけではない、
若い男性にも弱いのだ。
商売勘定抜きで作品を求める真っすぐな瞳に
やられちゃうのだ。
それは、若い時にだけ許される
アプローチなのかもしれないけれど、
真っすぐな瞳をもつ若者に出会えるのもクラフトフェアの
楽しみになっているのだから、歳を感じちゃう(笑)。
山本 美文