「語り継ぐこと、受け継ぐこと」を演題に
(株)日本オリーブの現会長・服部恒雄さんとの
公開講座(対談)が実現しました。
その対談の中でも話題に挙がりましたが、
服部会長のもとで今から約30年前、
牛窓オリーブ園をメイン会場に、
牛窓の街並みに美術が出ていく
「第1回 JAPAN 牛窓国際芸術祭」が開催されました。
テーマは、[人と海とオリーブ]だったように記憶しています。
規模は異なるかもしれませんが、
現在、瀬戸内海の島々を舞台に開催されている
国際芸術祭の先駆けとして、
その時の印象は強く心に残っています。
「JAPAN 牛窓国際芸術祭」はその後、
延べ9回にわたり、牛窓の街や港を会場に
ビエンナーレ(隔年開催)方式で続けられました。
その間、シノラマ上映(篠山紀信)・演劇(唐十郎の赤テント)・
舞踊(大野一雄、大野慶人)・パントマイム(ミラン スラデック)・
即興舞踊(デルフィーヌ ユレル)・詩の朗読(白石かずこ+姜泰煥)の
企画展に加え、
池田満寿夫を筆頭に
そうそうたるアーティストの作品群が、
瀬戸内の小さな港町に展示されていること自体 衝撃的でしたし、
この芸術祭が、地域の人たちと
全国から集うボランティアスタッフとともにに歩む
参加型のイベントだったことにも
当時は驚かされました。
「第5回 JAPAN 牛窓国際芸術祭」を目前に
信州に移住した僕は、
偶然?ものづくりの世界を志し、
地域に根ざした芸術祭や工芸祭にも関心を抱くようになりました。
その後10年間暮らした信州(木曽谷)から
生まれ故郷の岡山に工房移転する際、
松本市で関わっていた
「クラフトフェアまつもと」の風を岡山に届けたいという願いから
仲間と立ち上げた「フィールド オブ クラフト倉敷」も、
まもなく10周年を迎えます。
僕は一昨年、倉敷の実行委員を退きましたが、
今後も 世代交代しながら、
クラフトの裾野を広げていくことでしょう。
倉敷開催のクラフトフェアでの役目を終えた僕の中に、
再び30年前の牛窓での光景が点(とも)されたのは、
服部会長から牛窓国際芸術祭の様子を
面白おかしく聞かせてもらえるようになってから。
会長との何気ない雑談の中から、
「牛窓=現代美術」という枠にこだわらなくても、
僕は、クラフトという視点から
自分にできることを実現していくことで、
かたちは変われど
会長の意思を汲(く)むことができるのかもしれない、
と考えるようになりました。
クラフトが人と街を繋ぎ、
いつの時代も ぶれることなく
人間讃歌(生活を愛でること)を
唱えてきたクラフトフェア。
第2回展では、
前回展を上回る出展ブースで
牛窓の街並に
手仕事の調べを響かせてみたいと思います。
2015春の牛窓を、お楽しみに。
山本美文