岡山県の中腹部に位置する美星町に、
木製の福祉機器を製作している工房があります。
「となりの工房」代表の沖ちなみさんは古くからの友人で、
年に一度は会食し、
互いの近況を話し合ってきた仲。
僕が信州で木工を始めて間もない頃、
たしか? 彼女は岐阜の訓練校?の木工科?に
通われていた?はず???
もう三十年ちかく前のことなので、
記憶さえあいまいになってしまってるけど・・・
「となりの工房」の仕事内容は、
障害や高齢で身体の自由を奪われてしまった方々の
症状に則した補助器具(車椅子や座位保持装置)を
主に木で製作していくこと。
時にはドクターを介して
入念な打ち合わせの下で作りあげていく
丁寧な彼女の仕事ぶりを目の当たりにして、
それまで安易に口にしていた
「オーダーメイド」という言葉のもつ意味を、
考え直さなくてはいけない気がしたのです。
オーダーメイドのあり方について一から改めようと決めて
参考にしたのが、「テーラー」と呼ばれる
紳士服の仕立て屋さんのとる手順。
【 寸法どり 】
【 デザイニング 】
【 型紙起こし 】
【 チャコ引き 】
【 裁断 】
これらの一連の流れと照らし合わせながら作った
「採寸用の椅子」。
先ずは、
採寸用の椅子に腰かけてもらい、
【座面の高さ・角度】
【背もたれの角度】
【肘掛けの高さと傾斜角】
を身体に合わせて試してもらいます。
最後に、
背中の丸みとS字カーブを採寸させてもらうわけですが、
「テーラーメジャー」と呼ばれる巻き尺を
首元にかけた木工の姿に驚かれることも(笑)
椅子のデザインは、背のカーブに合わせて
1本1本削り込めるスピンドルタイプにすることにして
出来上がったのが、こちらの椅子。
試作品に1度座ってもらってから
完成品へと導くため、
通常作る椅子の倍以上のお値段にはなりますが、
座り心地のよい木の椅子をお探しの方々から
ひきあいのある「オーダーメイドの椅子」になりました。