かつて木工を学んだ信州での暮らしは、
豊かな森に囲まれての日々(10年)でした。
フクロウ、カモシカ、クマの棲息する
森の樹々を素材にする自分の仕事が、
結果的に
身近な動植物の環境を奪うことに
繋がりはしないかと、
実のなる木(広葉樹)を避けていた
時期もありましたが、
生活の傍(かたわ)らに森を育て、
身近な森の恩恵を受けながら生きる
木曽山中の人々の暮らしぶりに、
それまで口にしていた
「自然保護」という言葉は
しだいに僕の中から消え、
森への畏敬の念に従い、
大地と共に生きる人の強さを学びました。
針葉樹だけに限らず、
豊かな森の広葉樹にも向き合ってみようと決めたのは、
だれにでも立木の姿を思い描くことのできる
慣れ親しんだ樹種(広葉樹)の家具や器を使うことで、
「この国の森と人の暮らし」が繋がっているという
実感が伝わり易いと思ったから。
頭(知識)で知ることも大切。
でも、覚えるだけでは身につかないことも多いから・・・(ぼくだけかな?)
身近な森の息吹を掌(てのひら)から感じとる歓びは、
「モノを大切にする心」まで育ててくれたりするのだから
不思議なものです。
(地元の栗の木を使ったテーブルとベンチ)