瀬戸内の澄んだ空と海の青



工房から15分程 車を走らすと
牛窓(うしまど)という小さな港町に着きます。
いにしえの牛窓は、万葉集にも「風待ち、潮待ちの港」
として登場する歴史深い街。




近年はヨットハーバーも完備され、
リゾート地としても人気のスポットです。
ただ、
遠くから眺める瀬戸内海は美しく写るけれど、
夏の海水浴に行けば、年々汚れていく海の現実に
直面してしまいます。



子供の頃見ていた海の青は
絵の具の青より青く、
その透きとおった海の青に
誘われるかのように出向いた身近な海。

少年は、
海中にあるはずの海の青を探そうと
何度も何度も海の底まで潜ってみたけれど、
海の中に青色は探せず、
海中から海面に浮き上がろうとしたとき見上げた空の青が、
水面に写りこんで
海の青を照らしていることに気づいた。
そして、澄みきったその青は
透きとおった海水があって初めて
生まれることも知った。

やがて時代は海から澄みきった青を奪い去り、
今では、青という色の概念さえ
変わってしまうほど
身近な海が汚されている。

海岸沿いに立ち、
しばし目の前の海を眺めてみる。
岸辺に押し寄せる波音と沖を行き来する小船の
エンジン音は変わらずとも、
時代とともに変わりゆく海の色に胸が痛む。

              山本 美文

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