2006年に、倉敷・ギャラリー幹で開催した
二人展(小黒三郎×山本美文)「クロスオーバー」展より
〈出会い〉
東に中央アルプス、北西に御岳山を望む木曽谷の山村にある木工の専門学校に通っていた20年前、糸鋸の練習をしていた友人が毎日のように動物の組み木を切り、自慢しながら僕に見せてくれたことがあります。後(のち)にそれが組み木デザイナー・小黒三郎さんの作品の写し(コピー)であることを知ったのですが、単純化されたその動物たちのなんともいえない愛くるしいデザイン、さらにそれらをパズル化した組み木という発想について、当時連日のように語り明かしていた若き木工の卵たちの間でも羨望の眼差しを持って受け入れられていました。
数年後、倉敷での初個展の折初めて小黒さんと出会い、専門学校時代に憧れた人を前にガチガチに緊張していた記憶だけが残ります。スイス・ネフ社とデザイン契約され、数々の美術館に永久コレクションとして作品が収められ、木工を通して世界中の子供たちに笑顔を贈る小黒さんの姿は、今も「雲の上のひと」という存在に変わりありませんが、初めてお会いして以来、そのデザイン観やものづくりとしての姿勢など教えてもらっています。
僕の20代は、スキーに情熱のすべてをかけ、木工とは無縁の世界からの転職だったため、小黒さんから聞くデザイン観のすべてが目から鱗(うろこ)状態。初個展以来やりとりしてきた手紙やファックスは大切にファイルし、時折読み返しては、ものづくりのヒントを得る僕のバイブルになっています。木工を初めて20年間追い求めてきた「素ゆえに美しいかたち」。この機会にあらためて見つめ直せれば、これほど嬉しいことはありません。
山本美文
(二人展の会場入口に掲げた挨拶文より) 2006年