「12月の個展に向けて、作って欲しいうつわがあります」
と書かれたのメールが入った数日後、
手書きのメッセージと共に届いたのは、
もう10年くらい?前に作った作品(白漆の深皿)でした。
毎日のように使われ、
暮らしの中で「育てられたうつわ」は、
出来たてほやほやの頃より
はるかに美しく、
しっかり使い込まれた白漆の表情からは
料理の脇役として活躍してきた時間まで感じとれます。
夢中で彫り続けた鑿(のみ)痕が
刻々とその表情を変えてゆく。
光の射す窓辺に置けば、
白く輝く
雪山のように見えたり、
夕暮れ時には、
たそがれていく里山の光景を思い起こしたり・・・
作った(10才若い)頃の刷毛の勢いは
失っているかもしれないけれど、
あの頃と同じ場所に立ち返り、
今の自分の全霊をこめて
同じお皿に対峙してみるつもりです。
いつでも、フラットな場所に立ち返り、
その時々の自分の力量を試せるのも
同じものを作り続ける工芸ならではの醍醐味なのかもしれませんね。