水辺の心象風景

アーツアンドサイエンス(HIN)での取扱いを担当してくれている女性は、
幼い頃から絵を描くことが好きだったけれど、
学生時代に才能がないと思い詰め、
その世界から離れたという・・・

絵の世界に生きていない僕からできるアドバイスなんてなかったけれど、
「木工の才能がないから、僕は作り続けているのです」と応え、
「自らの美意識を変えていきたいだけなんです」と続けた。

何でも評価したがる日本の美術教育の下では、
彼女のように、好きでも諦めてしまう学生が増える一方に違いない。
画家になることだけが選択肢じゃないはずなのに・・・
帰り際に、
「いつかまた、絵筆を握る日を待ち望んでいます。」とだけ付け加えて
僕は京都を後にした。





昨年、アーツアンドサイエンス用に試作した
白漆の珈琲缶(豆200グラム用)。
アーツアンドサイエンスのカタログに載せるために送ったもの。

ちょうどその頃訪れた福山市の神勝禅寺。
目的は、ここのうどんだったけれど(笑)、
寺に続く路沿いの池に射し込む光が、
モネの池の心象風景のように見え、僕は息を飲んだ。

工芸の世界では使いたくないと思っていた「表現」という言葉を受けとめてでも、
その水辺に射す透き通った光の光景を
自分の作品に写し込んでみたいと思い、
立ち止まっていた。

その日以来、
「光のもつ色彩を白漆で表現してみたい」
と願いながら続けてきたテストピース。

ようやく、
思い描いていた色彩に近づいてきたので、

普段使っている漆刷毛でなく、
絵筆を握り、
あの光を求めてみた。








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