「本田」の10周年を祝って、
工房で書き留めたパンセを30篇ほど届けました。
手仕事の合間に、
その時々の心情を「なぐり書き」しただけの文面ゆえ、
「詩」と呼ぶにはおこがましいし、
「短章」と呼べるほどの深い内容もありません。
ただ、
時流に流されない(自分が自分らしくある)ための
碇(いかり)を下ろすような作業です。
30篇の内から何点かを選んで
冊子にまとめて下さるそうです。
拙い文面ですが、
手仕事に由来するパンセが
来場してくださる皆様に届きますように(願)
「本田」にポツンと置かれていた
片足の折れた聖人像を工房に持ち帰り
修繕して以来
雨の日も風の日も
ぼくの仕事を見守ってくれている
ベレー帽につぶらな瞳の彼
ぼくのベレー好きを知ってか知らぬか
「岡山に連れて帰ってもらえたら嬉しいです」
と店主に誘われ
パリから岐阜経由でやってきたテディベア
「ボンジュール、異国の職人さん」
隣に寄り添う甘~い視線の彼女がぼくに微笑みかけてくれる
技巧に溺れず
伝統に甘んじないよう
日々の修練に身を尽くす
理念に捉われず
あらゆる場面でノンポリシーを貫くために
目を閉じ
孤独をうたい
生活を賛美する
木の葉から滴る雫に差し伸べる掌のかたちが
うつわのフォルムを写しだす
生命の欲求は
時に
かたちを通し
命を結ぶ
天然酵母のパンをこねる職人の手
海上でバランス良く網を引く漁師の手
農薬に頼らず雑草をむしる農家の手
誠実な仕事には少しの辛抱と根気が必要だ
それでも
便利さにかまけず
手仕事に従っている限り
仕事への向上心が涸れてしまうことはない
【profile】
「低空飛行を愉しむ」が信条
誰よりも低く
地面スレスレを飛び回っていたい
いつだって
一番遠く離れた場所から青空を見上げるために