クラフト~9(約束)

将来の夢を、自らの力で切り開ける人だっている。
もともと持っているエネルギー量の違いで、
羽ばたけるタイプの人たちだ。

僕のように、エネルギーほぼ0カロリーの人間は、
羽ばたくことさえできない「他力本願タイプ」・・・
木工を始めたのだって、
偶然出会った画家のアトリエで、
木彫の小鳥を削る先生の姿に憧れたのがきっかけだったのだから。
以来、先生が天寿を全うされるまでの
約35年の間に教わってきた「美意識」を
僕なりに解釈して(引き継いで)きたに過ぎません。
アトリエで交わした会話や先生との約束を果たしたくて
今日も僕は木を削り、漆を練っています。




ものづくりを長く続けてきた職人の言葉を求めて
時折「座右の銘」を尋ねられることがあります。
子供の頃から目標や夢を持ったことのない僕は、
いつも戸惑い、
う~~~~~~~ん、「座右の銘」というわけではありませんが、
幼稚園:年長組の時の先生から教わった
「あいさつをしましょう」
「ともだちをたいせつにしましょう」
「やくそくをまもりましょう」
この3つだけを守ってます!
と答えるのですが、
たいてい次の話題に振られてしまいます・笑


慕っていた画家のアトリエの片づけ(遺品整理)している時、
奥様よりいただいた木彫の小鳥用の型紙。
その型紙を僕の工房に持ち帰ったものの、木取りさえできずにいました。
憧れの存在を形にしてしまうと、先生との距離感まで縮まってしまいそうで(怖くて)・・・
そんな意気地なしに、
ある日、天からの啓示が降りてきます。
懸命に頑張るひとりの少女の話を耳にした時、
「その娘(こ)の掌に小鳥を持たせてあげなさい」
という先生からの言葉が、確かに聞こえてきたのです。
その瞬間、
僕の中に、一羽の鳥が浮かびます。

先生に薦められて移住した
信州の山岳に棲息する雷鳥の姿でした。

(おわり)





























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プロフィール

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山本美文アトリエ
性別:
非公開

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