バランス感覚

美大を出たわけでもなく、
才能に恵まれてもいない自分が、
30年以上もの間 木工を続けてこれた謎は解けてはいませんが、
美しい身体動作をスキーに求めていた若き日の「美」への憧れが、
住む世界は変れど、
今も僕の原動力になっているような気がします。

何でも型から導入したがる指導法が性分に合わない僕には、
腕の構えや腰の位置、目線や膝の角度?等の形ばかりを指摘する
40年前のスキーメソッドが馴染めず、肌にも合いませんでした。
大学4年生の時に、たまたまイタリア国家検定員のスキー資格を取得して帰国された
スキースクールの校長からの誘いを受け、
そこで(働きながら)教わったイタリアのスキーとの出会いから
僕はスキーを生涯の仕事にしたいと思うようになります。

「速いものは美しい」

「速いスピードで自在にコントロールできるようになれば、
必然的に美しいフォームになっている」という考え方が、
僕に「必然性」という理念を植えつけてくれます。
(はたちの頃の山本君)
そして、
美しい身体動作の究極は、
アンバランスの中でとろうとするバランス感覚にあることを学びます。

デザインを先行させず、レースで培った速さを
車体に落し込むフェラーリ(イタリア車)の美しさも、
きっと同じような理念に基づいているのでしょうね。
「変わらない美しさ」って、どんな世界でも揺るがない精神に帰するものがあります。

10代の頃から夢中になったジャズの不協和音やアドリブの世界観。
20代で知ったイタリアのスキーメソッド。
共通しているのは、
スピード感の中で生まれる「アンバランスなバランス」感覚。

ストックを鑿(のみ)に握りかえた今でも
僕が木工ロクロや漆塗りの世界に魅かれる理由は、
整えることで生みだされる工芸の美しさの「はなれ」にある、
整えることのできない美しさ(アンバランスなバランス)を表現してみたい
という願いを持ち続けているからなのかもしれません。
































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山本美文アトリエ
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