中国山地で伐採される小径木の広葉樹を活かすために、
木工ロクロを始めたのも、工房移転してからです。
信州時代は、
小さな鉋(かんな)で木を掘りこむ「刳(く)りもの」
と呼ばれるうつわを作っていましたが、
やり出すと 止まらなくなる性質がアダを討ち、
およそ半年で指が動かなくなり、
「腱鞘炎」と診断された苦い経験もあったので、
岡山では木工ロクロを独学。
漆芸界の大家・多摩美の名誉教授(高木晃先生)から、
「簡単な漆なら、直ぐできるから自分でおやりなさい」
と薦められ、「はい」と即答。
翌日から漆を塗り始めます・笑
ちょうどその頃、
地元(岡山や倉敷)の建築家との交流が深まり、
毎月のように工房に集まっては、
うつわから建築空間に至る様々な話題をつまみに
お酒を囲む仲になっていました(夜明けまで語り明かしていたっけ・笑)
住宅を設計するだけの建築家は、
僕の工房には寄って来ませんが、
住宅と生活を愛する建築家は、
家具やうつわ使いも見据えて住宅を設計されるので、
互いに引き寄せられ、ひとつの空間を連想できます。
建築家からの図面を起こすだけでなく、施主の密かな要望に
応えるのも、木工の仕事?です。
(事例・1)
「 家具のようなキッチンを」と依頼されたクルミのキッチン
ダイニングテーブル用のベンチを
軒先に出せば、
寝椅子&オットマンとしても使えます。
(事例・2)
客人の多いおうちからの要望に応えて
通常は、4人掛け用のテーブル
2~3人の客人の折には、テーブルを延長し、
6~7人掛け用のテーブルに。
さらに大人数の集まりの際は、
窓のサイズに合わせて作ったコレクション棚の前に
テーブルを移動させ、棚がベンチに早変わり。
9~10人でテーブルを囲みます。
(コレクションの品は、引き出しに収められます)
(事例・3)
「シェーカー家具のようなキッチンを」
(事例・4)
「ボーエ・モーエンセンのシェーカーチェアにあったテーブルを」
(事例・5)
「食卓を囲む家族それぞれの椅子」
(事例・6)
「屋根裏部屋をパソコンルームに」
建築家の思い描く空間を邪魔しないように、
施主の要望に応えるという
ちょっとした工夫が試されます。
2004年、親しい建築家のひとりを、
クラフトフェア松本に誘ったことが呼び水になり、
2006年、「第1回フィールドオブクラフト倉敷」の立ち上げに関わります。
46才の時でした・・・
(つづく)