瀬戸内の「タイタイ」

「タータ」と云えば、お風呂のこと。
「トト」は、お魚。
方言以外に
岡山のおかあさんが まだ喋ることのできない赤ちゃんに
風呂や魚の名称を教える時の呼び名として使われる言葉の数々。
(今ではそんな呼び名を知らない若いママも多いのでしょうが・・・)

「パパ、ママ」同様、同じ文字を続けることで
初めて言葉を発する赤ちゃんにでも発音し易く考えられている。
ただ、
それらの言葉は、
赤ちゃんに教えるために用いられる呼び名なので、
子供が成長するに従って
「トト」は「タイタイ」に変わり、
やがて「サカナ」と呼ぶようになる。
成長魚ならぬ成長語だ。

注目すべきは、「タイタイ」という呼び名。
関東で魚の横綱といえば 
鮪(マグロ)の名が真っ先にあがるのでしょうが、
西の横綱は、「鯛(タイ)鯛(タイ)」
祝いの日にふるまわれる刺身といえば鯛が一般的だし、
スーパーのお刺身盛合せに鯛が入っていないと
売れゆきが悪いとも聞く。

木工の人間国宝(無形文化財)黒田辰秋が
岐阜の付知に滞在した折、
なぜ地元の良材の桧を使わないのか
正すように語った例え話がある。
「欅(ケヤキ)が鮪なら、桧(ヒノキ)は鯛だ」
誰にでも解かり易くなぞらえた黒田辰秋の言葉は
見事に本質を捉えているから、
実に洒落っ気があって面白い。

話を「タイタイ」に戻そう。
岡山の訓練校(木工科)の先生に
有名な「釣りバカ先生」がいて、
工房からも程近い港に自前の船を停泊させている。
中学校時代の後輩でもある彼は、
物心つかぬうちから漁船に乗って育ったという強者。
彼の育った小さな漁港では漁師の数も減っているようですが、
漁師を横目に、威勢よく漁にでかける彼の姿は
さびれゆく漁港で どの様に映るのか聞いてみたいほど。
休日になれば、
小豆島周辺の海や和歌山沖にまで船を出すという。

今日も
「山本さん、釣れたから取りにおいでぇ」との連絡が入った。

ヒエー!60㎝の天然もの(鯛)、
2~3日は鯛づくしだ。

「酒とバラの日々」ならぬ「酒とタイタイの日々」










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プロフィール

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山本美文アトリエ
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