「カフェオレボウル」に添えられた手紙

岐阜「本田」での個展を終え、
ほっと一息。

期間中に出向いて下さった皆様、
ありがとうございました。


初日(11/3)のギャラリー企画
「喫茶室と音楽」のために
ブレンドしてくれた

yajima coffeeの香りが、
過ぎた日の出来事と
今を結びつけてくれます。


11月3日、
フランスの古陶を写した漆の「カフェオレボウル」に、

専用のピッチャーでカフェとミルクを同時に
注ぐ矢島さんの様子が、
動画(megumi hondaインスタグラムの中から)でも
見ることができるのだとか?!


カフェオレボウルの試作用に
「本田」から届いた白い古陶

正直、
この佇まいや古陶ならではの雰囲気を
漆で表現できるのだろうか?
という不安のほうが先立ち、
僕の手は仕事をためらっていました。

後ずさる自分の心に
勇気をあたえてくれたのが、
古陶に添えられていた
手書きの「メモ」用紙。

一枚の用紙に綴られた

カフェオレボウルの説明と本田夫妻からの願い(リクエスト)

お二人のカフェオレボウルに寄せる強い思いが伝わってくる文面を
繰り返し読むうちに、
連綿と続いてきた人と道具の歴史の中に身を置く
自分の仕事のあり方を俯瞰してみることができました。

時には自我を捨て、
歴史の中に身をゆだねてみる。

漆を塗ったり研いだり、
削ったり布着せしたり・・・

手仕事の歴史は、
伝統と革新が相まって新たな時代を迎えるもの。
「古いか新しいか」という対比だけで
ものを捉えず、
流れゆく時間に 
その軸を移していきさえすれば、
過去と現在が、
ひとつの軸の上で繋がっていることに気づきます。





















モダニズム建築と素材

日本のモダニズム建築に多大な影響を及ぼたと言われる
建築家のひとり、アントニン・レーモンド。

1919年、帝国ホテル設計施工のため、
フランク・ロイド・ライトの助手として来日。
1922年には独立して、「レーモンド事務所」を開設。


 娘の通う大学が施工された年が

    刻まれた礎石
     

大学から届いた「学園通信」の中に、
園内を見学できる社会人向けの建築講座があったので、
参加してきました。



       
 〖女子大を木工が歩く〗の巻



建築に ずぶの素人(木工)が見ても分かる
現代建築との違い。〖その1〗

レーモンドが、
日本の気候・風土が呼び起こす必然に
眼を向け、自然を受け入れる建築を
形にしていること。


日本の気候風土(高温多湿)に
対処するために、

窓の上に庇(ひさし)を付け、

雨が窓ガラスをつたわないよう配慮された奥まった窓。

のっぺらぼうの箱では、風雨にさらされちゃいますから⤵




      

      広い講堂内も、明るく開放的


                     (北の窓)


                     (南の窓)

北窓から南窓に抜ける風をよむ設計。

真冬の風が直接入らないように廊下を隔てた北窓から
真夏の直射日光が当たらぬよう木の葉で覆われる南窓に抜ける風。


樹々に守られる
南窓の下には美しいタイルが貼られ、

  結露や寒さを防ぐ配慮まで。





建築に ずぶの素人(木工)が見ても分かる
現代建築との違い   〖その2〗


外観の秀悦なデザインもさることながら、
経年変化していく素材の美しさが、

屋内に時を刻み、
窓辺の光と影に照らし出されています。
  


 防犯をデザインした明かりとり





    和(引き違い戸)を意識した教室への入口
            



  手仕事によるらせん階段


見た目の美しさにとらわれず、
永遠(とわ)の美しさを求める強い意思と
素材と手が織りなすディティールの中に
潜む建築家のあたたかな眼差し。

「内なる美しさ」を形にした
建築家っていたんですね。凄い!!!













白漆のマチエール


誰からも学ぶことなく、好き勝手に漆を扱う僕の仕事。
漆芸の「王道」を歩む塗師の眼から見れば、「邪道」にうつるかもしれません。

漆もオイルも蜜蝋ワックスも、
日本の食品衛生法をパスしている塗料であれば
同列に扱い、
「どれそれが一番」という固定観念を持たず、
調合を整えてみたり、
時には、漆を重ねながら
テストピースを繰り返します。





刷毛は、
娘が小学生の頃使っていた工作用。


 下手な塗り方???
 上達しても、 
 上手く塗れない刷毛がちょうどいい!



  















「王道」を歩む塗師の手際のよさを見るにつけ、思い知る伝統の重み。
 でも、くじけない!
 世の中には自分と同じ様なテクスチャーを愛す人もいてくれる筈!


喫茶室と音楽


11月3日岐阜「本田」での個展
初日は、
yajima coffeeと

ハルカ ナカムラさんの奏でる
楽曲と共に始まりました。

案内状に記されていた「とある音楽家」の名は
当日まで告知されぬまま
初日を迎えたわけですが、
工芸の世界で語られる
「無名性」を意識し企画された、
店主の思惑(?)だったのかもしれません。

来場者は、
いつものように「本田」を訪ね、
演奏者の名も知らぬまま会場をまわり、
会話を続けています。
NHK・FMの番組「音の風景」を彷彿させる
「本田」の風景が、
日常と音楽を結びつけてくれます。

静かなピアノの音色に潜む「生命の強さとはかなさ」、
ライブハウスとは異なる「日常の光景」、
「隔たりのない世界観」。

「作家性」と「無名性」のはざまに揺れる
創作の理念が、日常という光景に
あぶりだされる(試される)作品展になりそう・・・

(岐阜市「本田」での山本美文展は、11/12日まで)










古陶を「写す」厳しさから学ぶこと


地方で途絶えていた漆椀の修繕など、過去から現在を結び「再生」をテーマにした
前回の展示より三年半。

今回は、”珈琲のための木の用具”を中心に、白漆の器やカトラリー、定番の作品に加え、今展に合わせて特別にフランスの古陶カフェオレボウルの写しが届きます。
初夏のフランスで出会ったその古手のボウルは、椀なりの優美な曲線、
高台までのくびれの線は厳しく、東洋的なこれまでにない綺麗な形に小さな感動を憶えました。
その古き良き形は、美文さんの掌から新たに”木の器”となって引き継がれます。

                「本田」店主  本田慶一郎



DMに綴られた本田さんからの上記の願いを受け、
「本田」から届いたカフェオレボウルを
只 ぼんやり眺める日が続きます。

「写す」ことを「真似る」ことにしないために・・・
(古き良き形から先人のものづくりの姿勢を読み取るために)

               山本美文





プロフィール

HN:
山本美文アトリエ
性別:
非公開

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