後ろ姿と佇まい

名作椅子に合わせた食卓や机の依頼を受けることがあります。

時代背景やデザインコンセプトがはっきりしている名作椅子ゆえ、
先ずは時代背景の「お勉強」から・・・
その間待っていただける気の長い(心の広い)方からの
注文でなければ受けられない仕事。

先日、納品したテーブルと
ウルムスツールを組み合わせた写真が工房に届きました。

「とても気に入ってます」といった内容のお手紙まで添えて頂き、
ほっと胸をなでおろしています。

当初は、ウルムスツールに合わせて
薄手のテーブルを構想していましたが、
「作業机としても使いたい」という要望に備え、
厚手の天板と脚の中に
「いかに違和感なく薄手のウルムスツールを収めるか」に頭を悩ませました。

75㍉角(厚手の角材)から木取った脚を五角形にし、
その一面(左右あわせて2面)をスツールの板厚にそろえることで、
「眼の錯覚」を利用。(脚がスッキリ見えるように仕立てています)

(天板)和歌山県産のヒノキ
(脚部)岡山県産のクリ

今回はスツールだったので、
「後ろ姿」はありませんが、
テーブルと椅子をとり合わせる時は、
「椅子の後ろ姿」に気を配りながらデザインを進めていきます。
(テーブルに収められた椅子は、後ろ姿しか見えませんから・笑)


                                                (クルミのスピンドルチェア)



                               (イグサ・ヘリンボーン編みの肘掛け椅子)




                                               (ボーエ・モーエンセン「シェーカーチェア」に取り合わせた食卓)


人の立ち姿同様、
「後ろ姿」の佇まいに、
人(品)格は見え隠れするもの。

素敵な後ろ姿に恋されるような椅子を作ってみたい・・・

そう言うぼくは、無防備な作業着(後ろ)姿の毎日です。












おでんに里芋?

梅雨の晴れ間を見て、今日は畑の草刈りday。

日当たりの悪い場所に植えた里芋が
とっても元気です。

晩秋に収穫する里芋を、
我が家では、おでんの具に!(不思議がられますが、大好物なんです)。
「おでん」といえば、
学生時代にアルバイトのお金を懐に通った
(東京の)おでん屋で食べていた「ちくわぶ」も欠かせません。
岡山で「ちくわぶ」の話をすると、
???と受け止められがち・・・
最近でこそ、
スーパーでも「ちくわぶ」を買えるようになりましたが、種類は選べません。
ちくわぶを食べ慣れていない岡山の皆様、
ちくわぶを直接おでんに入れてはいけませ~~ん!
(下茹でして下さいね)

学生の頃、
東京で初めて食べたおでん(関東煮)に
スジ肉が入っていないことにショックを受けたように、
「ちくわぶ」の入っていないおでんに、
今ではいち末の寂しさを感じちゃう・・・

それと、「バクダン」

岡山のおでん屋で、下手に「バクダン」なんて言ったら、
怖がられちゃいます・笑
茹で卵をさつま揚げで包んだ具材のことですが、
岡山ではなかなか食べられないので、探しましたぁ~
でも、探せばあるもの、
ありました、ありました!玉島「船松」に!!

我が家のおでんに欠かせない「里芋」「ちくわぶ」「バクダン」、
「スジ肉」はもちろん、「イイダコ」や「レンコン」も入れちゃいます!

そういえば、岡山で連れてってもらったおでん屋「たにや」のメニューには、
「トリ貝」「ツブ貝」「生わかめ」「黄ニラ」「ゆば」etc.
初めての具材が ずらり!
えっ「岡山のおでん」???
「静岡おでん」の個性には負けちゃう?けど、
全国のお酒も揃っているので、
気をつけて下さい。(すぐに酔っぱらっちゃいます)







岐阜での個展を終えて

無事、岐阜「本田」での個展を終えることができました。

厳しい社会情勢の中、
会場まで出向いて下さったり、
各地からお問合せいただいた皆様に心より感謝致します。

「本当に、ありがとうございました」


冊子(パンセ)に載せた一節は、
開催さえ危ぶまれ、
盆や膳を製作しながらも、
これらの作品を本当に岐阜に届けられるのだろうか?
という不安から
なかなか手を動かせずにいた
4月初旬の心持ちを書き留めていた文です。
                 
                   ↓

手洗いやうがいを心がけ、
もし、病に冒されれば医者にかかる。
それ以外にぼくたちには何ができるのだろう・・・
たとえ この命が断たれたとしても、
それも自分の運命として
日々の暮らしを淡々と生きていたい。

社会情勢をよそに
季節は確実に時を受け入れ、
間もなく桜の季節を迎える。
「桜まつり」は中止されても
移ろう季節に心を寄せ、
車窓から眺める山間の桜に思いを馳せたり、
桜並木の下を歩くだけでも時は刻まれていく。
2020年は、
ぼくたち一人一人の心の持ちようが問われる年になりそうです。



冊子(パンセ)の「まえがき」では、
本田さんが、お店をopenした頃のエピソードや、

冊子を編集してくれた奥様「メグちゃん」の

「編集後記」まで。

ありがとうございます。
お二人からの心遣いに励まされながら、
同じ時代を共に歩める幸せを感じています。

ハルカナカムラさんのピアノの音に、
本田さんが僕のパンセを朗読して下さる予定だった
オープニングは持ち越すことになりましたが、
いつか実現しましょう!

昨年の12月に招かれた岡山での
「ハルカナカムラ+田辺玄」orbe演奏会の終了後、
夜の駐車場でノートに綴った文は、
今回の冊子には載せておりませんが、
約束した朗読会を必ず実現させるために(心に言い聞かせるために)
ここに書き留めておきます。

               ↓

暮れゆく海を見渡せるカフェで、
まもなく始まる演奏会。
陽が落ちるにつれ、
霞んでゆく瀬戸大橋と四国の山並み。
瀬戸内海を一望できる窓際には
クリスマスに肩を寄せる恋人たちが並んでいるので、
ぼくは、
西の窓越しに点る街の灯りに目を移しています。

ぼくがサンタなら、
クリスマスさえ忘れ、
日々の暮らしに身を尽くす人を探して
プレゼントを渡すだろう。

肩を並べ、
語りかけるようにピアノを奏でる
音楽家の白い指に祈りを捧げながら、
街の上空を訪ねてくるサンタクロースを探しています。
         
                               ベルクにて
                                      山本美文




                                       
                                         











パンセ (手仕事のうた)




他人(ひと)と比べることでしか自分を評価できず、
夢ばかり語っていた若き日々。
さりとて、
苦くつらい思い出ほど甘く、
甘かった思い出の方が ほろ苦く思い起こされる。
年令のせいでしょうか・・
時の魔法にかかってるとしか思えない。











手仕事に従事し、
日々の鍛練を続けている若者の指が
歪んだ職人の指に。
自らの指のかたちを変え、
魂を据えた弟子が独立へと導かれていく。













華やかに振る舞う「ハレの日」がもてはやされ、
日常に身をゆだねる「ケの日」が失われていく。

「ハレの日」を指折り数える日々にだけ  幸せは満ちてゆく。













おじいちゃんの手作りする「孫のための椅子」は、
世界共通の形におさまっていく。
愛情が形作るものは総じて美しく、
転びにくく丈夫な作りは必然性に満ちている。
作り手が使い手に愛情を注げる心の美しさがものの形にまで反映し、
「用の形」を完成させる。
無償の愛に勝るものはない。











2CVファンには内緒

汚れた作業服で毎日を過ごす木工には、
高級車が似合いません(様になりません)。


軽トラ代わりに使ってる2CV


シートを外し、


重い材木を運んだり、
トコトコ
家具の納品に出かけたり。

荷物の重みで傾いて走ってる
岡山ナンバーの2CVを見かけたら
「ファイト」
と声をかけてやってください。

過酷な労働に応えてくれる602ccの相棒。
(こんな使い方をしてると、旧車ファンに叱られちゃうかも?)
でも、
大好きなので 許してください。






プロフィール

HN:
山本美文アトリエ
性別:
非公開

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